[弁護士コラム 10]養育費の一括支払い

 養育費は一括支払いは可能でしょうか?
 養育費というのは,親の権利ではなくて,子どもを監護・養育していくために,その都度必要とされるものです。
 そこで,養育費の支払は,定期給付が原則となります。ですから,家庭裁判所において,養育費の一括払いを認めて貰うのは困難です。

 もっとも,支払義務者が養育費の一括支払いに合意している場合には,かような合意をすることも可能です。
 しかしながら,以下のような問題があります。

 一括支払いには,どのような問題がありますか?
 養育費を一括支払いしてもらえれば,子供を養育している側はとても安心です。
 養育費について将来貰えるかどうかを案ずる必要がないからです。

 しかしながら,養育費を支払う側からすれば,本当に養育費に費消されるのか保証がありません。母親に養育費を一括支払いをした場合に,子供の養育費として正当に使用されずに,母親個人の別の事柄に費消されてしまったとしても,父親側がそのことを知り得ないこともありえます。

 また,本来,養育費は,その時点時点の経済的な状況によって,支払額が決まります。現在高額所得者であり,その収入を基準に養育費の額が決まったとして,将来,何らかの理由で収入が極端に下がった場合でも,すでに一時金で支払った養育費の返還を求められるかというと難しい面があります。
 また,感情的な面からすれば,養育費を一括で支払いをしてしまうと,それで親子の縁が切れてしまい,子供との面会交流がスムーズに行われないのではないかなどという疑念も生じます。

 さらに,一時金を支払ったとしても,何らかの理由で子供が要扶養状態になったときに,さらに養育費を支払わなければならない可能性は否定できません。

 なお,一括で支払われた養育費が子供のために確実に使われることの担保の制度として「養育信託」制度があります。
 信託銀行が一括支払いの養育費を預かり,運用しながら子供には定期的に信託時決めた金額を支払っていくものです。

 いずれにしても,離婚に際して,養育費が取り決めされるのは,「子供の福祉」の観点からです。そこで,養育費の一括払いについても,親の利害ではなくて,子供にとって何が良いかを勘案して決めることが必要でしょう。

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