[弁護士コラム 11]駐車場内での事故の過失割合

 駐車場での事故
 駐車場は,実は事故が非常に起こりやすい場所です。
 というのは,デパート等の施設の駐車場は,それぞれが駐車場の敷地にあわせて作られているため,進行方向等が一定ではなくて,個別の施設ごとに違うものです。
 ですから,その施設を初めて訪れたものは,標識や車の流れを見ながら自動車を運転するのですが,初めての場合,間違った動きをすることも多くあります。
 また,駐車場に早くとめないといけないということで焦って運転することもあり,そのような気持ちが事故に繋がり安いのです。
 かような駐車場内での事故について,過失はどのように認定されるのでしょうか。
 駐車場区画内に停まっている車に衝突した場合には,停まっている車には過失はないのは明らかですが,双方の車が運転中の場合には,その過失割合が問題となります。

 走行中の車と駐車場から出る車との事故
 走行中の車に,駐車場区画から出ようとした車が衝突する事故は多くあります。
 この場合には,どちらの過失が大きいのでしょうか。
 公道の場合でもそうですが,車が停まった状態から発進するものは,周囲の状況を確認して発進しなければなりません。
 走行中の車からすれば,駐車している車が沢山ある中で,それぞれの車が発進するのではないかと注意を払うのはとても困難と思われます。
 ですから,かような場合には,駐車場区画から発進する車の方が7対3程度の割合で責任を負うことになるでしょう。
 もっとも,走行中の車のほうが高速運転をしていた等の事情があれば,過失割合は変動します。

判例紹介(大阪高裁平成22年4月27日判決)

 駐車場区画からバックで出ようとした車の方の過失割合が高いとした事例

 本件事故の上記態様によれば,控訴人は,駐車区画から控訴人車両を後進して通路に進入したのであるから,後方の通路を走行する車両の有無に十分に注意し,安全を確認して通路に進入すべき注意義務があったのにこれを怠り,後方の安全確認が不十分のまま漫然と後退した過失が認められ,他方,Aにも,駐車場内の通路を走行するに当たっては,左右の駐車区画から通路に進入する車両があることが予想され,現に,進行方向左側の駐車区画の控訴人車両にその手前約九mの地点で気づいたのであるから,その動静に注意し,減速するなどして安全を確認して進行すべき注意義務があったのに,これを怠り,控訴人車両の動静に注意せず漫然と走行した過失がある。
 そして,上記の事故態様等を総合考慮すれば,本件事故におけるCと控訴人の過失割合は三〇対七〇とするのが相当である。

 走行中の車と駐車場に止めようとしている車との事故
 駐車場は,に停めようとしている車と走行中の車が衝突した場合には,どうでしょうか。  駐車場というのは,そもそも車を停めるためにあります。ですから,駐車場に停めようとする行為はごく自然な行為であってイレギュラーな動作ではありません。
 駐車場に入れようとする者からすれば,走行中の車は,自分が駐車場に入れようとしている間は走行をストップしてこちらの動作が完了するまで待ってくれるものと期待するのが通常です。
 逆に走行中の車は,走行車線内に駐車場に入れようとして動作中の車があることは容易に目視できるのが通常です。  そこで,かような場合には,走行中の車の過失割合が高いと思われます。

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