[弁護士コラム 18]債務者である会社とその代表者の死亡

お金を貸している会社の代表者が死亡した場合にどのような処理が必要ですか?

 お金を貸している先の会社の代表者が死亡した場合には,債権者として,どのような処理が必要でしょうか。
 会社の代表者が死亡しても,その代表者の生前になした法人の法律行為の効果は影響を受けることはありません。
また,その代表者の選任した支店長等の使用人の権限や,委任契約によって付与を受けた代理人の代理権も,それによって消滅することはありませんので,安心してください。

 もっとも,死亡後に,その会社と新たな取引をするためには,誰が新しい代表者であるのかを確認することが必要です。
 そこで,債務者である会社の代表者の死亡を知ったときには,その後の法人との取引をするにあたっては,後任の代表者から,会社の商業登記簿謄本や印鑑証明書等を入手して,新代表者を確認する必要があります。

 なお,相続人との関係はどうなるのでしょうか。
 そもそも,会社の代表者の地位は一身専属的な地位といえます。代表取締役は,その個人の能力に着目して株主等から委任を受けるものであるからです。
 そこで,代表者個人の死亡によって代表者の地位が当然に相続人に相続されることはありません。
 それ故,代表者個人の相続関係は,その会社との取引には直接にはまったく関係がないと言えます。
 もっとも,代表者が株主を兼ねている場合には,株式の相続に伴った経営権も相続人に移りますが,そのことから当然に代表権が相続人に移るものではなく,相続した株に基づいて総会を開催して,新たな代表者を選任する必要があります。

 法人登記がされていない法人の場合はどうなりますか?
 法人登記はされていないが,実態は,社団である組織は,権利能力なき社団と言われています。
 このような社団の代表者が死亡したときも,上記と同様に,代表者の資格は相続の対象となるものではありません。
 そこで,代表者の地位はその相続人に承継されることはありません。

 ただ,権利能力なき社団の所有不動産については,現在の不動産登記法の取扱いでは権利能力なき社団名義による所有権の登記が認められていません。
 そこで,その場合にはやむをえず社団の代表者個人名義で登記されることになっています。

 そこで,登記名義人となっている代表者に相続が起きると,形式的には代表者個人の相続人がその不動産を相続することになって,登記名義が相続人になってしまいます。
 ただ,この不動産は,実態としては前代表者の相続財産ではないので,死亡した代表者の債権者や相続人の債権者等はこれらの不動産の差押えをすることはできません。

 そして,この場合には,新代表者は前代表者の相続人に対して自己の個人名義に所有権移転登記を求めることができます。
 同様に,権利能力なき社団が法人登記がなされていないために,やむをえず代表者個人の名義で契約することにより負担した債務についても同様になります。
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