[弁護士コラム 20]休車損について

休車損はどういう場合に認められるのでしょうか?

 運送会社の貨物自動車、タクシー等、営業車が損傷して営業ができなかったために損害が生じた場合、その損害について,当該被害車両のについて,相当な修理期間または買換期間の範囲内で,いわゆる「休車損」が認められることになります。

 営業車両については,単に車の価値だけではなく,その車が利益を生むという潜在的な価値があり,この点についてもきちんと賠償されないのでは,不公平と言えるからです。

休車損賠償の具体的金額はどうなりますか?
 休車損は,被害車両によって1日当たりに得られる利益額に相当な修理期間または買換期間を乗じて算出されます。
 具体的には,被害者の確定申告等で1日当たりの利益を算出して,これを車両の保有台数で割って算出したうえで,1台当たりの売上げから経費を控除する方法で,1日当たりの利益を算出します。

 1日当たりの営業収入は,事故前3か月ないし1年の売上実績を元に算出します。
 経費としては,流動経費をはじめ,稼働しないことによって支出を免れた経費は,当然控除します。
 具体的に,売上げから控除されるべき経費は,車両を使用しないことによって免れた変動経費(車両の実働率に応じて発生額が比較的に増減する経費)として,燃料費・通行料・修理代等となります。

 この点,固定経費(車両の実働率にかかわらず休車期間における発生額が一定である費用)である,人件費,減価償却費,保険料,駐車場使用料は控除すべきではありません。
 これらの固定経費は,事故があっても継続的にかかる経費だからです。

 なお,遊休車等が存在していて,それを使用して,営業利益をあげることが可能な場合には,休車損は認められません。
 というのは,損害賠償においては,被害者側も,信義則上,被害の拡大を防止すべき義務があるからです。
 そこで,遊休車等が存在していて,これを活用することによって事故車両を運行していれば得られるであろう利益を確保できた場合には,原則として,上記利益分については休車損害として賠償を求めることはできないことになります。
 さらに,遊休車の存在や稼働状況については,加害者側において立証することは事実上不可能です。ですから,有給車が存在しなかったことについての立証責任は,被害者が負担するとしている判例(大阪地裁平成21年2月24日判決)もあります。
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