[弁護士コラム 21]遺産分割の方法の指定について

遺産分割の方法の指定とはどういう遺言ですか?

 被相続人は,遺言で共同相続人の相続分を定めることができます。
 これを「相続分の指定」と言います。
 ここで,相続分とは,共同相続人が披相続人の遺産をどれだけの割合で承継するかということを意味します。
 法律は,法定相続分と言って,何も遺言がない場合に、法律上当然に相続される割合を定めています。

 しかし,相続分が指定されると,各相続人に,法定相続分が適用されず,指定された相続分(指定相続分)で相続することになります。

 なお,「相続分の指定」は遺言でしかできない扱いとなっています。
 また,遺留分を侵害する「相続分の指定」があっても,その遺言も当然に無効ではなく,単に,別途,侵害された遺留分権利者が,遺留分減殺請求をできることになるだけです。

 もっとも,相続債務についても相続分の指定をすることはできますが,債務が「相続分の指定」にしたがって分割されるとしても,それを債権者に対して主張することはできません。
 債権者の立場からすれば,自分の知らないところで,資力のないものに負債が押しつけられるようなことになっては酷だからです。

指定された相続分をどのように処理するのですか?
 遺言中に「相続分の指定」だけがあっても,具体的にどの財産をどの相続人が承継するかが定まるわけではありません。
 そこで,相続財産は共有状態になったままです。
 しかしながら,かような場合には,相続分の指定に割合について不服な相続人がいるとすると,遺産分割手続は紛糾するおそれがあります。
 かように,「相続分の指定」だけを定めた遺言は,事態を紛糾させ,かえって相続人たち全員に面倒をかけてしまう結果になりかねません。
 その意味では,相続分の指定のみの遺言書というのは,なんとも中途半端な遺言ということが言えると思います。

どのような遺言書が望ましいですか?
 遺言によって遺産を処分する方法としては,「相続分の指定」のほか,具体的な物を指定して行う「遺産分割の方法」の指定や,「遺贈」の方法があります。
 相続でもめないようにするためには,遺言では,すべての財産を特定して誰に何を承継させるのかをきちんと明らかにしておくことが必要です。
 かように遺言者の意思が明確であることによって,相続人も納得し,その遺言に従うことも多くあります。

 また,遺言書においては,遺留分を念頭において,各相続人の取得額が遺留分を下回らないように配慮することが必要です。
 こうすることによって,遺言書の内容に不服がある相続人であっても,遺留分以上の権利が主張できないために,紛争になることがなくなるからです。
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