[弁護士コラム 25]離婚と住宅ローンの処理

夫婦の双方が住宅ローンを負担している場合には,住宅ローンはどのように処理されるのでしょうか?

 離婚をする際に住宅ローンが残っている場合には,どのように処理されるのでしょうか。住宅ローンは夫婦だけの問題ではなくて,金融機関も絡む問題なので,若干,その処理が複雑になります。
 たとえば,住宅ローンについて,夫婦の連帯債務であったような場合には,出て行く妻側からすれば住宅ローンの負担を外して欲しいと思うのが通常だと思います。

 家を出ていく方の名義のローンが残っていると,将来の滞納が心配だし,離婚するのであるから元夫との関係は一切絶ちたいと思うのが通常だからです。
 しかしながら,住宅ローンは,夫婦間の契約ではなくて,金融機関との間で交わされた契約です。
 金融機関側からすれば,夫婦の収入を合算して住宅ローンを承認したのに,「離婚をしました」ということで,片方の夫婦が突然に債務者から離脱してしまうようなことがあれば,住宅ローンの返済に不安を感じるので,容易にそのような債務免除はしないと思われます。
 かように,たとえ夫婦で合意をしたとしても,簡単に住宅ローンの内容を変更することはできないのです。
 それは連帯債務者であっても,連帯保証人でって同様です。たとえ離婚するからといって,勝手に名義を変更したり,保証人を外れたりすることは認められません。
 契約内容の変更には,絶対に,金融機関の承諾が必要なわけです。

夫婦の一方のみが住宅ローンを負担している場合には,住宅ローンはどのように処理されるのでしょうか?

 夫婦の一方のみ,たとえば,夫だけが住宅ローンを負担している場合には,あまり問題はありません。
 通常は,夫がそのまま住み続け,住宅ローンを負担していくだけです。

 この場合,夫がローンを負担しているにもかかわらず,妻が,子供とそのまま住宅に居住し続けるということは可能でしょうか。
 話し合いの結果,子供が成人するまでは,居住して良いという約束をすることはありえます。法律的には使用貸借の関係になります。
 もっとも,その場合でも,夫が住宅ローンを滞納した場合には,たとえば競売等になってしまえば,妻としては使用貸借権を第三者に主張することはできず,その住宅から退去しなければなりません。
 使用貸借権というのは,その意味で,権利としては万全ではありません。

 では,使用貸借ではなくて,財産分与で所有権を移転するという前提で,夫が住宅ローンを支払い続けるという約束をした場合にはどうでしょうか?
 この場合には,妻が所有権を取得しているという点で,使用貸借とは違います。しかしながら,住宅ローンは土地建物に抵当権が設定してあるのが通常です。そこで,妻が所有権を取得したと言っても,あくまでも抵当権付の所有権でしかありません。
 そこで,夫が住宅ローンを支払わない場合には,やはり抵当権を実行されて競売となってしまうリスクがあることに代わりがありません。
 かようなリスクは不可避なもので,どのような約束をしてもリスクが残るのはやむを得ません。
 そこで,そのことを頭において,生活設計をしていくことが重要です。

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