[弁護士コラム 28]コインパーキング事故と管理者の責任
コインパーキングに駐車をしたら,フラップ板があがったままの状態になっていたために車両が接触して損傷しました。駐車場管理者に損害賠償を請求できますか?
駐車場の管理者は,法的には,いわゆる土地工作物責任を負っています。土地工作物責任とは,土地の工作物の瑕疵(かし)によって他人に損害を与えた場合に,工作物の占有者・所有者が負う賠償責任のことを言います(民法第717条)。
土地の工作物は,土地に剥き出しで設置してあるのが通常で,時として人の生命身体等に損害を与える危険性を内在しているので,その所有者・占有者は,厳重な管理責任を負うべきであるというのがその根拠です。
この場合の瑕疵とは,工作物が通常備えるべき安全な性状や設備に欠ける場合を意味しています。
この責任を第1次的に負担するのは工作物の賃借人などの占有者ですが,占有者は無過失を立証すれば免責されます。
そして,その場合には,所有者が責任を負うことになります。即ち,瑕疵がある以上,所有者は自己に過失がなくても責任を負わねばならず,その責任は一種の無過失責任となっています
フラップ板の不具合は,土地工作物の「瑕疵」と言えますか?
フラップ板も含んだコインパーキングの設備自体は,土地工作物と言えると思われます。
しかしながら,フラップ板があがったままであったことが「瑕疵」と言えるかは微妙な点があります。
この点,東京地裁平成26年11月7日判決というのがあります。
この判決の事例は,機械に被さっていたゴミの存在によりセンサーが車両の入庫と誤感知したことによって,フラップ板があがったままの状態になっていたものでした。
そして,判決は,運転者が基本的な注意義務を尽くして通常の運転方法をとる限り十分に,フラップ板があがったままであることを認識できたと指摘しています。
そして,フラップ板があがったままになっていることが生命身体の安全に関わる重大な事故に繋がる危険性は少なく,駐車場入り口にある精算機の右側面に,駐車場利用者が入庫前にフラップ板を確認するよう掲示もされていたこと等を総合考慮して,当該事案では瑕疵がなかったものとしています。
この判例では,一審と控訴審での判断が分かれましたので,微妙なケースだったと思われます。
事例の内容によってケースバイケースですが,「瑕疵」の判断の一事例として紹介いたしました。