[弁護士コラム 29]自分で作出した囲繞地の通行権
隣地の所有者が,自分の土地が袋地であって公道に通じていないから,私の敷地を通行したいと言っております。しかし,隣地の所有者は自分で土地の一部を売却することで囲繞地を自ら作出した経緯があります。このような袋地所有者にも囲繞地通行権はあるんでしょうか?
囲繞地通行権は,法律上,周囲の土地に全部が囲まれ道路に出られない土地(袋地)がある場合に,その土地所有者は道路に出るため囲まれている他人の土地(これを「囲繞地」といいます)を通行することが認められた権利です。
では,自分で土地の一部を売って囲繞地を作出した場合にでも,このような通行権が認められるのでしょうか。
この点,高松高裁平成26年4月23日判決は,かような場合でも,通行権を認めました。
もっとも,この判決の原審では,通行権を主張する者の先代が自己の所有地に製紙会社の導水管が埋没されていたために,同社に当該土地の買い取りを迫った上,かなりの高額で土地を売却したため袋地が発生したことを重要視して,「権利の濫用」により通行権を認めませんでした。
しかしながら,囲繞地通行権は,客観的に袋地であれば認められるものとして,高裁で判断が覆されたものです。
隣地の所有者は,さらに,自動車での通行まで求めてきています。そこまでの通行を認めなければいけないのでしょうか?
上記判例では,囲繞地は,進入路の一部を構成していて,かなり以前から継続して自動車による通行に用いられてきたという点を重視して,囲繞地通行権は自動車による通行を前提とするものと認めるのが相当としています。
囲繞地通行権は,法律上は,「通行権を有する者のために必要であり,かつ,他の土地のために損害が最も少ないもの」でなければならないとされています。
そこで,自動車の通行が認められるかという点についても,上記の法文に照らした判断が必要となります。
そして,一般的に,囲繞地通行権は自動車の通行まで含むかという点については,@自動車の通行を認める必要性,A周辺の土地の状況,B他土地の所有者が被る不利益等の諸般の事情を総合考慮して判断すべきとされています(最高裁平成18年3月16日判決)。
上記判例も,かような基準で,それまで自動車の通行が認められていたことを重視したものと思われます。