[弁護士コラム 30]面会交流の間接強制

調停で子供との面会交流について合意したのですが,妻がその合意を守らずに子供に会わせてくれません。強制的に会わせてもらえることはできないのでしょうか?

 調停や審判で面会交流のやり方をきちんと定めたとしても,それが守られないと絵に描いた餅になってしまいます。
 そのような場合には強制的に面会交流を実現できるのでしょうか。
 「守られない」とは言っても,子ども自身が,自分の意思で会おうとしない場合は,無理強いはできません。
 しかしながら,監護している親が,親のエゴで会わせないようにしている場合には,強制執行ができます。

 もっとも,強制執行といっても,事の性質上,人権尊重の観点からも,子どもを実力を使って家から連れ出して会わせるというわけにはいきません。
 そこで,調停・審判に違反して会わせない場合にはペナルティーとしての制裁金を課するという命令を裁判所に出してもらう「間接強制」という手続をとることになります。
 たとえば,面会交流を拒否して,1回会わせないと5万円というような,それなりにプレッシャーとなる額が命じられることになります。

調停条項では,どこまで約束がされていれば,間接強制ができるのでしょうか?具体的な日時は協議して定めるということで良いのでしょうか?


 間接強制ができるというためには,その履行の内容が具体的に決まっていなければなりません。
 内容が不明確なのに強制されるということになると,履行義務者からすればどのような行為をすればいいのかわからなくて酷だからです。
 この点,面会交流においては,@日時,A場所,B頻度等について明確に定めることが必要なうえ,さらに,子供の受け渡し方法についても明示をすることが必要です。

 たとえば,

1 面会交流の日程等について,月1回,毎月第2土曜日の午前10時から午後4時までとし,場所は,長女の福祉を考慮して相手方自宅以外の相手方が定めた場所とすること
2 面会交流の方法として,長女の受渡場所は,抗告人自宅以外の場所とし,当事者間で協議して定めるが,協議が調わないときは,JR甲駅東口改札付近とすること,抗告人は,面会交流開始時に,受渡場所において長女を相手方に引き渡し,相手方は,面会交流終了時に,受渡場所において長女を抗告人に引き渡す

といった,具体的な条項であることが必要です(最高裁平成25年3月28日決定)。

 幼い子供については,父親が親権をとるのは難しい面があります。
 そこで,親権は譲るにしても面会交流の約束だけは上記のとおりに確実なものにしておくことが必要です。
 また,母親側からしても,子供との面会交流は無理に拒むのではなく,養育費の支払いを円満にしてもらうためにも,子供の福祉の観点から父親との面会については広い気持ちで認めることが大切と思われます。

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