[弁護士コラム 32]低額の養育費の合意と変更請求
私は離婚に際して,早く離婚をしたいと思ったので,相場がわからず適当な金額で養育費の額を合意して離婚してしまいました。しかし,その後,やはりきちんと養育費を貰わないとやっていけないとわかったので,相場どおりの養育費を請求したいと思いますが,そのような変更請求は可能でしょうか?
離婚の際に,養育費の金額について合意書を作成して,離婚をすることは多くあります。
この場合に,離婚を急ぐために,専門家に相談せずに,安易に低額な養育費で離婚してしまうこともありえます。
この場合,夫婦が改めて協議して養育費の増額に合意すれば問題はないのですが,「既に合意済み」ということで協議をして貰えない場合には,調停等の手続で,改めて増額を請求できるのでしょうか。
一般的には,養育費の変更は,合意時とは異なった特別な事情がない限りは認められません。
当事者でなされた合意が尊重されます。
特別な事情とは,支払義務者に大幅な収入増があった場合等の客観的な事情が必要です。
また,合意当時から予想が出来たものであれば,その事情を織り込み済みで合意したとされますので,合意当時では予想ができないような事情の変更が必要とされるのが通常です。
合意した養育費が極端に低額な場合にはどうなのでしょうか?
極端に低額な合意の場合には,子供の不要請求権を不当に処分したものとして,かような合意自体が無効となり増額が認められる可能性があります。
もっとも,実際に,養育費の合意について有効・無効が判断される際には,そのような合意に至った経緯や,当事者がどのような意図だったのかも考慮して判断されます。
例えば,深刻なDVが原因となった離婚の場合には,被害者側は一日も早く離婚したいと望んで,本来ならもっと多くの金額を求めることができるのに夫の言いなりになって,安い金額で合意してしまったなどと言うこともあり得ます。
かような場合には,そもそも暴力が背景にあり,実質的に脅迫による合意ということで,合意自体が無効とされる可能性が十分にあり得ます。
もっとも,自由主義社会においては,当事者の合意というのが最大限考慮されますので,養育費の合意については,当初から安易な合意はせずに,代理人を頼む等として,きちんとした対応をする必要があります。