[弁護士コラム 36]配偶者が難病に罹患した場合と離婚原因

私の妻が難病に罹患をしていて,夫婦仲が悪くなりました。私は離婚をすることが出来るでしょうか?

 民法770条1項4号は,「 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。」を離婚理由としています。
 そこで,妻が難病になった場合にも,同条項を適用(類推適用)して,離婚が認められるのでしょうか。

 この点,名古屋高裁平成3年5月30日判決は,「配偶者の一方が難病に罹患した場合における他方配偶者からの離婚請求訴訟において,夫婦の婚姻生活における障害は,配偶者の一方が難病に罹患したという一点にあるところ,夫婦間あるいは親子間における精神的交流は未だ可能であり,子供との同居を願い,婚姻生活の継続を希望する一方配偶者の意思を考慮すると,入院生活の援助もせずに放置し,一方配偶者の希望する子供との交流さえ拒む,他方配偶者の態度のみによって,婚姻が回復しがたいほど破綻していると認めることはできず,離婚原因たる強度の精神病にも比肩しうる程度の疾患であるということもできず,本件離婚原因は認められない。」と判示しています。

そうすると,難病というだけでは離婚はできないのでしょうか。


 判例をみていると,結局,難病であろうと精神病であろうと,それだけで離婚が形式的に認められるということはありません。
 他の離婚原因と同様に,離婚に至るまでの双方のやりとり等を斟酌して,離婚がやむを得ないものであるかどうかを判断することになります。

 上記の判例では,夫側が,一方的に入院生活の援助もせずに放置し,一方配偶者の希望する子供との交流さえ拒んでいるという点が重視されたものと思われます。
 かように病気の程度のほかに相手方に対する対応が重視されています。
 病気を理由とした離婚について参考となる判決と思われます。

 なお,本件判決の一審判決では,「なるほど妻が難病に疾患した場合に,夫が献身的に妻の介護にあたり,夫婦の絆を保ち続けるという事例もあることは公知の事実であるが、,このような行為は美談として称賛されるものではあっても法的にこれを強制することまではできず」と判示して離婚を認めています。
 しかしながら,おおざっぱな判断であることは否めず,上記名古屋高裁のように,離婚に至る事情を詳細に認定する方向で判断すべきと思われます。

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