[弁護士コラム 37]宝くじと財産分与

私は,小遣いから購入した宝くじが当たったのですが,その収益は財産分与の対象となるのでしょうか。

 離婚事件では,夫婦の婚姻中の財産は,原則として全て財産分与の対象となります。

 これは,どちらの名義であるかということには依存しません。
 自分の名義の預貯金や,自分自身の就職先からの退職金であったとしても,逆に相手方名義で取得したマンションや株券でも同じことですし,子供名義の預貯金でも,分与の対象となります。
 もっとも,夫婦の一方が結婚前から持っていた財産や,相続で取得した財産は,特有財産として,財産分与の対象外となります。
 そして,財産分与の割合については,相手が専業主婦だとしても,2分の1ずつとされるのが通常です。

 では,宝くじがあたった場合はどうでしょうか。
 財産分与が夫婦の協力で築き上げた財産ということだとすると,宝くじを購入したのは夫婦の一方であり,その運で宝くじを引き当てたとも言えます。
 この点,宝くじが財産分与の対象となるかどうかは,以下の各要素を考慮して決定されることになると思います。

@購入資金は特有財産から捻出されたものであるかどうか
A宝くじからの収益金の使途(そのまま個人財産として貯金されているか,住宅購入資金等夫婦に共同の用途に使われているか)
Bそのほかの分与財産の状況

 この点,平成13年7月24日奈良家裁審判は,万馬券にあたった収益について,購入の原資である小遣いはそもそも生活費の一部であって夫婦共有財産であること,賞金は全て自宅の購入費用に当てられ,その自宅で12年間もの間夫婦として生活してきたこと等から,財産分与の対象としました

 しかしながら,万馬券という射倖性の高い臨時収入については購入者の運によるところが大きいので,その寄与が大きいことを認め,分与割合を1/3にとどめました。
 かように宝くじの当選というだけでは,ケースバイケースですので,注意が必要です。
 たとえば,個人の蓄えから購入した宝くじが当選し,個人名義の預貯金としてそのまま預金していた場合等は,財産の増加に夫婦の協力維持があったと言えないと考えられて,違う判断になることも十分に考えられます。

 なお,東京高裁平成29年3月2日決定では,宝くじの当選金を夫婦の共有財産と認めるのが相当としたうえで,その分与割合については,夫が小遣いの一部を充てて宝くじの購入を続けたことで,当選金が得られたことを考慮して,夫6割,妻4割の割合で財産分与を命じています。

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