[弁護士コラム 42]親権の停止・喪失について
子供の父母が定職につくこともなく,子供を虐待しています。親権者なので仕方ないのでしょうか。
このような事例の場合には,親権停止の審判を申し立てることが考えられます。
親権停止とは,父又は母による親権の行使が困難又は不適当であることにより子どもの利益を害するときに,関係者(子どもの親族や,児童相談所長等)の請求によって,家庭裁判所が2年以内の期間に限って親権を行うことができないようにする制度です(改正法により,新たに創設されました。)。
さらに事態が深刻な場合には,親権喪失の審判を申し立てることが考えられます。
親権喪失とは,父又は母による親権の行使が著しく困難又は不適当であることにより子どもの利益を著しく害するときに,関係者(子どもの親族,児童相談所長等)の請求によって,その親権を失わせる制度です。
なお,児童虐待については,児童相談所が相談・援助を行っています。
児童相談所は,必要な場合には,児童を児童福祉施設に入所させたり里親委託の措置をとることについて家庭裁判所に承認を求めます。
親権喪失の基準はどのようなものですか?
親権喪失は,「親権の行使が著しく不適当である」場合に認められます。たとえば,子を虐待し,又は通常未成年の子の養育に必要な措置をほとんどとっていないなどの事情がある場合です。
また,親権行使の方法が適切を欠く程度が高い場合であったり,父又は母に親権の行使をさせることが子の健全な成育等のために著しく不適当であることを意味しています。
実際の判断としては,実質的に「子の利益のために」なるかどうかが,親権喪失事由に該当するかのメルクマールになります。
なお,親権喪失については,昔の審判例では,監護教育権の消極的濫用を原因として親権を剥奪するには,親権を事実上行使し得ないことが第三者の圧力等やむを得ない事情によるときは親権濫用とは認めていませんでしたが,平成23年の民法改正により,親権者の有責性は要求されなくなりました。
具体的に親権の喪失が認められるのは,子の虐待等の明らかな事例以外では,「子の財産を破壊したり,手入れせずに放置し荒廃させる場合」「子の財産を理由もなく売却し担保に入れる」「長期間にわたり未成年の世話をせずに,他に養育を任せている」等の場合です。