[弁護士コラム 49]家業に従事した配偶者の寄与分
私は,無償で夫がやっていた商店の店員として働いてきましたが,夫がなくなった場合に,寄与分を主張できるのでしょうか?
一般的に,寄与分が認められるためには,被相続人との身分関係に基づいて通常期待される程度を超える「特別の寄与」がなければなりません。
寄与行為の内容が,被相続人との身分関係に基づいて通常期待される範囲を超えていることが必要です。
そして,夫婦間には、同居・協力扶助の義務があるため,寄与行為がその義務の範囲を超えていると認められる場合でなければなりません。
通常,例えば,夫が給与所得者である場合に,妻が家事に従事していることは,通常見られることであって「特別な寄与」とはされません。
そこで,夫が家業として農業又は商業を営んでいる場合に,妻が,その家業にも従事するということが,上記と違って「特別な寄与」とされるかが問題です。
この点,一般的には,専業主婦と違って,家業を夫婦協力して行った場合には,「特別な寄与」として寄与分が認めら得る可能性があります。
では,どのような場合に「特別な寄与」とされるのでしょうか?
まず,家業従事に「無償性」が認められることが必要です。
相続人か被相続人から世間並みの給料を貰って,家業に従事している場合には,寄与分を認めることはできません。しかし,全く給料がないか,世間一般並みの労務報酬に比べて著しく少額である場合には,無償性の要件を満たすと思われます。
かように,無償性が必要とされるのは,寄与分というのは,相続の場面で相続人間の公平を図る制度であるので,給料を得ていた場合には,寄与分を認めなくても公平が害されないからです。
次に,労務の提供が,一定以上の期間に及んでいることか必要とされています。もっとも,期間について明確な定めがあるわけではなく,一切の事情を考慮してケースバイケースで判断されます。
一般的には,3〜4年以上の期間が必要とされています。
次に,当該労務について「専従性」が必要となります。
労務内容が片手間にされたものではなく,かなりの負担があることが必要とされています。その程度に達しているからこそ労務を寄与分として換算しなければ,不公平になるわけだからです。
もっとも,必ずしも,この労務に「専念」していて,他の労務は一切していないというところまでは必要はありません。
最後に,寄与の結果として被相続人の財産の維持・増加がなければなりません。
寄与分は,精神的なものではなくて,具体的な財産の形成がなければ,これを考慮するのが現実的に困難だからです。