[弁護士コラム 51]フリーレントの違約金について
賃貸人として,いわゆるフリーレントで賃貸しようと思います。ただ,短期で契約を解約されては,あまり意味がないので,違約金の定めをしたいのですが,違約金条項は,有効でしょうか。
フリーレントは,入居スタート時において,一定期間の賃料を免除するものです。
入居者側からすると,移転初期における費用削減ができるために,入居先として,選択がしやすくなります。
逆に,貸主においては,フリーレントを謳い文句に入居者を募集することができるメリットがあります。
もっとも,貸主側からすると,入居後,長期間にわたって継続的に賃料収入がはいることを期待して,フリーレント条項を入れるわけですから,借り主が短期間で出てしまうことは避けたいと思うわけです。漫然とフリーレントだけを提供すると,悪質な賃借人にメリット部分だけを利用されかねません。
そこで,一般的には,フリーレントにおいては,特約で違約金を定めるのが通常です。
例えば、フリーレント期間3ヶ月とした場合に,「入居から1年以内に退去しようとする場合には賃料のえ3ヶ月分を違約金として支払う」等の条項です。
かような条項は,有効でしょうか。
この点,東京地裁平成25年6月25日判決というのがあります。
この事案は,3ヶ月間のフリーレントがある定期建物賃貸借契約において,賃貸人が家賃を滞納した入居者に対して,契約の解除と特約に基づく違約金を請求したものです。
特約では,上述の条項例と同様に,「本件契約を開始後1年以内に解約した場合には,賃貸人は,違約金として賃料3ヶ月分を支払う」とされていました。
判例では,3ヶ月のフリーレントがされているということからすれば,契約開始後1年以内の解除がされた場合には,フリーレント期間に相当する3ヶ月分の賃料額を敷金から控除することに理由がないとはいえないとして,貸主の違約金請求を認めています。
居住用の賃貸物件の場合でも,同様でしょうか?
上記事案は,営業物件に関するものであり,一般の住居用の事案では,「消費者契約法」の観点から制約があります。
一般的に,居住用建物の賃貸借契約においては,中途解約の場合における違約金額は賃料の1ヶ月分とされることが多いと思われます。
違約金というのは,入居者が予想に反し退去してしまった場合に,貸主が被る損害を担保するものですが,居住用の場合には,通常1ヶ月程度の期間があれば,次の入居者が決まるだろうという判断が前提であるからです。
ただ,フリーレントの場合には,貸主側は上述したように,短期での退出が認められると,それなりの損害を被ってしまいます。ですから,フリーレントがある場合には,もう少し違約金の範囲を広げても良いとの考えもあり得ます。 しかしながら,やはり,消費者契約法の観点からは,フリーレント特約がある場合には,例外的に,この期間を3ヶ月とすることが有効となるかは,微妙な問題があります。