[弁護士コラム 52]借家契約と一体の駐車場契約の解除について
店舗を賃貸しているのですが,それにともなって,店舗の賃借人に隣接する土地を駐車場として賃貸しています。この場合,駐車場部分だけについて契約を解除して明渡しをしてもらうことは可能でしょうか。
設問のように,店舗の借家契約と一緒に締結された隣接した店舗駐車場契約について,これを解約する場合の法律関係はどうなるでしょうか。
ご存知の方も多いと思いますが,建物の賃貸借というのは,借地借家法の規定によって,オーナー側が好き勝手に契約を解除することはできません。そのようなことが許されたら,店舗を借りて営業をしてもいつ立ち退かなければならないのか不安定なことになってしまうからです。
オーナー側が建物を明け渡してもらうには,厳密な「正当理由」が必要となっているのです。
この正当理由というのは,双方の物件使用の必要性や,契約に至った経緯,立退料の支払いの有無等を考慮して判断されるものです。
ところが,駐車場は,建物の所有を目的とした土地の賃貸借ではなく,借地借家法の適用のある借地権とは言えません。
とすると,賃借期限の経過をもって,駐車場賃貸契約が終了し,明け渡しが認められるとも思えます。
しかしながら,賃借人側からすれば,店舗に駐車場がないと,営業上のダメージは大きくなります。そのため,駐車場部分だけの解約が認められると,かなりの不利益を被ります。
このような場合,判例は,@双方の土地利用の必要性,A土地を利用できないことによる損失の程度,B土地利用に関する双方の認識・経緯 等を総合考慮して,場合によっては,駐車場契約の明け渡し請求が「権利の濫用」になることを認めています。
例えば,福岡高等裁判所平成27年8月27日判決は,カラオケ店営業を目的として一体的に賃貸借されている店舗並びにその駐車場の各賃貸借契約について,店舗運営に駐車場が不可欠なこと,賃貸人側にしても駐車場のみでの利用価値は低いこと,店舗と一体として利用されることが社会経済上も望ましいこと,賃料が適正でない場合には賃料増額請求が出来ること等を考慮して,駐車場部分のみの明け渡し請求を認めませんでした。
これは一般常識に適合した,極めてまともな判断であると言えると思います。
そうでなければ,店舗から追い出す手段として,駐車場部分をまず明渡請求をして,営業継続を困難にするような悪どい手法が横行することになりかねません。
かように店舗と駐車場を一体として考える判例がありますので,注意が必要です。