[弁護士コラム 54]共有持分の相続と共有関係の解消
共有不動産について,共有者の1人が死亡して複数の相続人が共有持分を相続したという場合には,その共有状態を解消するためにはどのような法的手段が良いでしょうか。
共有不動産について,共有持分を解消するためには,共有物分割訴訟(民法258条)を利用します。共有者の一人は,共有状態をいつでも解消することを求めることができるのです。
その結果,持分に応じて,以下のような分割方法が考えられます。
@共有不動産そのものを分割する方法(現物分割)
A共有不動産を共有者の1人が取得する代わりに他の共有者に代償金を取得させる方法(代償分割)
B競売して代金を分配する方法(換価分割)等によって,共有状態を解消することができます。
そのいずれかの方法によるかは,共有物の使用状況や,面積,当事者の希望等を総合的に考慮して,最終的には裁判所が判断をすることになります。
共有物分割訴訟は,地方裁判所の管轄となります。
ただし,もともと単独所有だった不動産が,相続によって共有となった場合には,別途注意が必要です。
この場合には,共有物分割請求ではなくて,遺産分割手続き(民法907条)によって,共有状態を解消します。
遺産分割を管轄するのは,家庭裁判所です。
遺産分割の場合には,その不動産のみに着目するのではなくて,被相続人の遺産全体について分割をする手続であり,「特別受益」や「寄与分」を考慮すると法定相続分とは異なる結果になることもあるので,単純な共有物分割手続きには適さないと考えられるからです。
例えば,「寄与分」の判断にあたっては,複雑な場合には家庭裁判所の調査官による調査が行われることがありますが,地方裁判所の共有物分割手続きでは,かような調査手続きはありません。
そこで,相続によって生じた共有状態については,家庭裁判所の遺産分割手続きを経るのが,合理的なわけです。
では,共有持分が相続されたために,共有状態の中にさらに遺産分割未了の共有状態が入り込んでいる状況の場合には,どのような共有関係の解消手続きがとられるべきなのでしょうか。
この点については,最高裁判所平成25年11月29日判決は,@共有物について遺産共有持分と他の共有持分とが併存する場合には,その共有関係の解消を求める方法は,共有物分割訴訟である。Aそして,共有物分割の判決によって遺産共有持分を有していた者に分与された財産は遺産分割の対象となり、この財産の共有関係の解消は遺産分割によるべきとしました。
そして,@の共有物分割訴訟の結果,価格賠償によって賠償金の支払いを受けた者は,遺産分割がされるまでの間これを保管する義務を負うものとし,裁判所は,判決において,相続人のそれぞれにおいて保管すべき賠償金の範囲を決定した上で,遺産共有持分を取得する者に対して,各自の保管すべき範囲に応じた額の賠償金を支払うことを命ずるものとしました。
代償金の保管義務を命じたのは,遺産分割の結果は,必ずしも法定相続分とイコールにはならない可能性があるので,将来の遺産分割の結果が判明するまでは,取得した財産を自由に費消することはできないとしておく必要があるからと思われます。
もっとも,この保管すべき金員を配分する割合ですが,頭割りとすることも考えられますが,いわゆる法定相続分によるとするのが最も合理的と思われます。