[弁護士コラム 57]共同遺言の禁止について

 私は,妻と一緒に遺言書を作成しました。それぞれが先に亡くなった場合には相手方に全財産を残すという内容です。これを1枚の紙に二人で書いて作成しました。この遺言は有効でしょうか。

 設問のような遺言書は,共同遺言と言われるもので,民法975条の規定により禁止されております。
 そして,判例上は,かような遺言がされた場合には,遺言書全体が無効となるとされています。

 これは,遺言は,他人の意思に関係することなく自由にされるべきものであるし,遺言者が自由に撤回できるべきものです。
 遺言書は,最後の意思表示なので,遺言者に制約があってはならないからです。しかし,二人以上の者が同一の証書に遺言をした場合には,遺言の自由が制約され,遺言書の撤回も自由にできなくなってしまいます。
 そこで,法律は,かような共同遺言を禁止したわけです。

 実際にも,力の強いものが,立場の弱いものに共同遺言を押し付けたような場合を考えれば,このような立法趣旨は理解できるかと思います。
 なお,共同遺言は,あくまでも同一の紙に,一緒に遺言をした場合を言うのであって,各自独立した紙に書いた遺言書を一緒の封筒に入れておいたような場合には含まれません。
 この点,2名が共同遺言をした場合でも,一方の遺言書が形式的に無効な場合でも,他方の遺言書は単独の遺言書として有効にはならないのでしょうか。

 最高裁昭和56年9月11日判決は,このような場合でも,片方の形式が適合している遺言書も無効としております。

 では,一見共同遺言に見えるものでも有効になるようなケースはないのでしょうか?

 例えば,夫婦の共同名義で作成された自筆証書遺言について,妻がその作成に関与していない場合で,妻側は,遺言書作成の意思もなかつたことや,遺言の内容も,もっぱら夫所有の財産の処分に関することのみが記載されていて妻の遺言としては何ら法律上の意義を持たないものであった場合に,夫のみの単独の遺言として有効であると認めた判例があります(東京高裁昭和57年8月27日判決)。
 かような場合には,共同遺言の禁止にあたるような,遺言者の意思の不当な制約といった自体はないことからすれば,判決の内容は納得しうるものです。

 それから,作成名義の異なる2つの遺言書が,それぞれ別の紙に記載されていたが,契印がほどこされた上で綴られていた場合について,その遺言書が容易に切り離すことができるものであった場合には,共同遺言の禁止には当たらないとした判例があります(最高裁平成5年10月19日判決)

 また,第三者が同意する旨の記載があったとしても,遺言書の内容について,被相続人の所有物が対象であることは明らかであって,第三者は単に同意をした場合には,共同遺言には当たらないとしたものもあります(大阪地裁平成12年8月31日判決)。

 かように,一見,共同遺言に思えても,実際には単独の遺言書と判断しうるものもありますので,遺言書の有効・無効の判断は慎重にしましょう。

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