[弁護士コラム 6]結納と婚約解消について

 結納金の法律的な意味は何でしょうか?

 最近はあまり見かけないようですが,婚約に際して,当事者間で結納が交わされることはあります。
 婚約は当事者間の意思の合致のみで成立するものですから,こういった結納は婚約の成立要件とはされておりません。
 まして,結納をしない例も多い今日では,法律的な意味合いは薄れています。
 結納の法的性質については、証約手付的なものとする考え方や,解除条件付贈与とする考え方(結納を婚姻の不成立を解除条件とする贈与類似のものとする考え方),目的的贈与(婚姻を最終目的として授受される目的的な贈与)などの複数の考え方があります。

 判例は,「結納は,婚約の成立を確証し,あわせて,婚姻が成立した場合に当事者ないし当事者両家間の情誼を厚くする目的で授受される一種の贈与である」として,証約手付と目的的贈与のあわさったものとしているようです。(最高裁昭和39年9月4日判決)としています。

 婚約解消の場合には結納金は返還するのですか?

 結納の最終目的が達成されなかった以上は,受け取った側は不当利得としてこれを返還すべきことになるでしょう。
 ただし,婚約解消の原因が結納を渡した側にある場合には,この者が相手方に対し結納の返還請求を行うことができるかですが,通常は,有責者は権利の濫用として,結納の返還請求権はないでしょう。
 常識的にも,自分に責任があるのに,結納の返還を要求するのは非常識といえます。
 判例も,婚姻が不成立に立ち至ったのは,もっばら授与者(男性)の責めに帰すべき事由によるものであり,授与者が不当利得として結納金の返還を求めるのは信義則上許されないとしたものがあります(大阪地裁昭和43年1月29日判決。)

 内縁関係になったり,婚姻が成立した後も返還が認められることはありますか?

 裁判例や学説は,一般に内縁ないし婚姻が成立すれば結納はその目的を達したので返還の義務はないとしています。
 結納が婚姻を最終目的として授受される目的的な贈与とすれば,そのような考えは素直なものです。
 しかしながら,内縁等の期間が短くて,事実上の夫婦共同体が成立したとはいえないような場合には,返還義務があるとすべきでしょう。

 どの程度の期間をもって「内縁等の期間が短い」と言えるかは微妙です。
 判例においては,挙式後2か月間の間,同棲したとしても,その間当事者間の融和を欠き,相互間の情誼を厚くするに至らなかったときは,結納の返還義務があるとした事例があります。他方,約8か月間夫婦共同生活を継続して,その間に婚姻届出も行われた後,妻からの申出で協議離婚がされた事案について「すでに結納授受の目的を達した」ものとして夫からの結納の返還請求が否定されたケースもあります。
 ですから,どの程度の事情が認められれば結納授受の目的を達したと認めるべきかについては,ケースバイケースと言えるでしょう。
 もっとも,婚姻届を出した後の結納の返還請求は難しいのが現状です。






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